本日は、少額債権回収における刑事手続をご紹介します。

 

債務者の中には、そもそも商品の代金を支払うつもりもないのに、
商品を大量に発注して、結局代金を支払わず、
仕入れた商品を転売するという悪質な者もいます。

このような悪質な債務者は、同種の商品を大量に発注するとか、
発注時に行われる通販会社の審査をかいくぐるために
偽装工作を行うなどの特徴があります

もちろんこうした行為は、詐欺罪等に該当する犯罪行為です。
このような悪質な債務者の場合、
自分がしている行為が犯罪であることを十分に認識した上で、
組織的に詐欺行為を繰り返していることも多く、質が悪いです。

彼らに民事上の法的措置を講じたとしても、
そもそも商品を届けた住所には誰も住んでいないとか、
電話番号もつながらない、足が付かないように工作されているというケースがほとんどです。

こうなってくると、民事上の対応には限界があり、
捜査機関による強制的な捜査が行われない限り対処は困難です。

 

そこで、このような債務者に対して、どうしても
責任追及しようと思えば、捜査機関に告訴するなどするほかありません

とはいえ、捜査機関に捜査を求めたところで、
債権の回収に直接つながるわけではありません
(容疑者が逮捕された場合には、容疑者側から賠償したいとの
申し出がなされると、一定の回収が図れる場合はあります)

そこで、各企業の経営方針として、悪質な債務者を許さない、
悪質な債務者にはけじめを付けさせることで、
他の債務者に対して示しを付けるという観点を持つ企業のみが、
捜査機関に対して捜査を求めるという選択肢を取ることになると思われます。

そして、捜査機関に対して捜査を求める方法としては、
①被害届を提出する、②告訴する、の2つがあります。

この2つの違いは、捜査機関がその事件を捜査する法的義務を負うかどうかという点です。

①被害届は、単に捜査機関に対して、
犯罪の被害に遭ったという事実を届け出るという意味しかありません。

よって、捜査機関が捜査するかどうかは、捜査機関の判断となり、
捜査機関には捜査を行う法的義務はありません。

②告訴は、受理されると捜査が開始され、
検察官は最終的な処分の結果を告訴人に対して通知する義務を負うほか、
不起訴処分とした場合は、告訴人の請求があれば、その理由を通知する義務を負います

これらは捜査機関にとっては負担となりますので、
少額債権の詐欺事件の場合には、捜査機関は、
得てして告訴ではなく被害届の提出を求める傾向があります。

しかし、被害届の提出のみでは捜査が行われる保障はありませんので、
あくまで告訴の手続きによるべきと思います。
具体的な告訴の手続きについては、弁護士に相談することをお勧めします。

 

本日はここまでです。本連載は本日が最終回となります。
最後までお読みいただきありがとうございました。