前回は、滞納者に関する

① 支払い意思があるのか

② 支払い能力があるのか

③ 管理能力があるのか

の分析のうち、①支払い意思の見極めについて述べました。

そして、支払い意思があるケースや、クレームにある程度理由があるケースについては、できる範囲で柔軟に対応する「アメ」型の交渉をご紹介しました。

ちなみにこの場合でも、「アメ」を与えすぎることによって債務者が「調子に乗って」しまい、再び滞納する可能性も出てきます。

そこで、「アメ」を与えつつも、ある程度「ムチ」によって釘を刺しておく必要があります。

具体的には、「万が一、お約束の期日にご入金が確認できない場合には、私の手を離れて債権回収の専門部署に移管してしまいます。そのようなことはないとは思いますが、入金をお忘れにならないよう確実にお願いします。」といった付言をしておきます。

 

では、クレームが正当でない場合や、何の不満もないにもかかわらず支払う意思のない債務者に対しては、どのような交渉をしていくのが効果的でしょうか。

このタイプの債務者に「アメ」を与えても、全くの逆効果であるばかりか、時間の無駄であると同時に、回収担当者の疲弊にもつながってしまいます。

そこで、この場合は、最初から「ムチ」を振りかざします。要するに、「このまま支払い拒絶を続けていれば、大変なことになってしまう」と思ってもらうのです。

具体的には、以下の内容を伝えると効果的です。

・法的措置を講じる場合があること

・弁護士に委任する可能性があること

・遅延損害金を加算して請求する場合があること

・今後の取引ができなくなること

・債権回収会社に債権を譲渡する場合があること 

などです。

これらの内容は、債務者にとって厳しいものですので、言い方自体は脅し口調にならず、「淡々と」伝えることが必要です。

これら不利益を淡々と伝えることで、債務者の支払い意思が回復し、渋々ながらも支払ってくれる場合があります。

他方で、これら不利益を伝えても、「この金額で裁判まではしてこないだろう」と高をくくっている

債務者も存在します。

このような債務者に対しては、詐欺罪での刑事告訴も検討することをちらつかせて、さらなる「ムチ」を振るうこともあり得ます。

ただし、支払うつもりもないのに商品を発注する行為は詐欺に他ならないのですが、実際には警察が告訴を受理することは稀です。

こちらも、あくまで、告訴の可能性を淡々と伝えるにとどめるべきでしょう。

それでは、今月はここまでとします。

次回は、「そもそも支払い意思があるのか?ないのか?」は、

どうやって判断するのか?について解説いたします。

最後までお読みいただきありがとうございました。