本日は、滞納者に支払い能力があるのかについての見極めと対応法についてご紹介します。
「ない袖は振れない」という言葉があるように、支払意思があっても、現実問題、支払う原資(支払い能力)がない場合は、支払いをすることは難しいかもしれません。
また、訴訟や差押などの手続きを進めたとしても、債務者に資産がなければ、回収は難しいと言わざるを得ません。
しかし、支払い能力がないと言っても、債務者に完全に収入がないということは考えられません。
失業している人であっても、雇用保険から給付を受けていたり、親族から援助を受けている場合もあるでしょう。
また、(十分な収入があるのだが、)収入に対して、支出が大きいので支払い原資がないという場合は、分割の支払いを検討することなどによって、回収の可能性は出てきます。
そこで、まずは、支払い能力がなさそうな債務者に対しても、本当に支払が困難であるのかを債務者自身と一緒に確認し、(収入の詳細や給料日、家計を圧迫している支出などについて情報を聞き出します)、できるだけ支払いしやすい方法を提案して、支払いにつなげる交渉をします。
これをカウンセリング型交渉と呼びます。
例えば、「とにかく今はお金がなくて支払い能力がない」と主張する債務者に対しても、上記の点を聞いていくと、
実は、毎月の給与の中から分割金の3万円を返済していくのは物理的に難しい場合であっても、2ヶ月後のボーナス時にまとまった返済をしてもらうことで、毎月の返済額は半額の1万5000円とするのであれば、支払いが可能となるというケースはよくあります。
このような状況の債務者に対して、あくまで毎月3万円の返済をして欲しいと要求しても、現実問題支払いできないでしょうし、支払いの意思も減退してしまいます。
次に、一見支払い能力がないと思える債務者であっても、それは「他の債務の支払いがあるから、当社の債務を返済できないにすぎない」というケースもあります。
この場合は、債務者にとっての支払いの「優先順位」を上げてもらうことで、回収を可能とすることができます。
ここで、支払いの「優先順位」とは何かですが、要するに、債務者にとって日常生活を維持できなくなるかどうかが基準となります。
家賃や水道光熱費は典型で、これらを滞納して家を追い出されるとか、電気・ガス・水を止められてしまうと日常生活が維持できなくなるので債務者の優先順位は最も高いでしょう。
この理屈は応用できます。
例えば、ある債務者が2つの債務を抱えている場合に一方の債権者からは督促状が何度も送られてきて、それで支払いをしないと、「支払いがない場合は法的手続きを検討します」と電話が来るとします。
他方で、もう一方の債権者からは、一度督促状が来ただけで、それを放置しても特段電話も来ないか、電話が来ても、のらりくらりと「お金がない」などと回答したところ、「では、お金ができた段階で連絡ください」と終わってしまったとします。
この場合に、どちらの債権の優先順位が高いかは明らかでしょう。
本日はここまでとします。
次回は、支払い意思も支払い能力もある債務者に、あとはその支払いを管理する能力が必要である点について検討します。
最後までお読みいただきありがとうございました。