本日は少額債権回収における全体スケジュールの作り方について検討していきます。
前回、債権回収はスピードが命であり、少額債権回収についても「鉄は熱いうちに打て」があてはまると解説しました。
そして、債権回収の回収率をより向上させたいのであれば、自社督促をある程度行っても支払ってこない債務者に対しては、早期に弁護士等へ委託することを検討する必要があります。
なぜなら、弁護士等による督促は回収率向上に大きく寄与しますが、その効果を最大化するためには、できるだけ早期に弁護士等へ委託する必要があるからです(債権が古くなってしまうと、弁護士であっても回収できない債権というものが増えてしまい、全体としての回収率は格段にダウンします)。
この点、弁護士等へ早期に委託すると、
①自社督促による取りこぼしが増える可能性があり、自社督促であれば支払う必要のなかった弁護士費用等を支払うことになる
②弁護士等へ委託したことに対するクレームが発生する(「私は支払うつもりがあったのに、弁護士に頼むとは何事だ!私を悪者扱いするのか!」)
といったデメリットも考えられます。
しかし、これらデメリットについては、あまり懸念するべきものではありません。
というのは、まず、①自社督促は、通常、後述のように督促状送付も督促架電も複数回行いますので、それでも支払いをしない債務者に対して自社督促を継続しても効果は期待できず、取りこぼし防止にはつながらないからです。
そのような債務者に対しては、弁護士等による督促を通じて債権者の本気度を伝える必要があるのです。
また、②弁護士に委託したことに対するクレームについては、言いがかりに過ぎず、契約で定められた支払期限を遵守しない債務者に対して、債権者が弁護士等を利用して回収しようとも、それは債権者の自由であって、債務者にとやかく言われる筋合いでありません。
ある程度自社督促を経た上で、支払いがない場合に弁護士等へ委託することを予告などしていれば、あまりクレームも発生しないでしょう。
以上から、回収スケジュールの策定にあたっては、ある程度の自社督促はするものの、早期に弁護士委託へつなげる方針がベストです。
具体的には、全体の督促期間を1年間とした場合、自社督促期間を債権発生後3~4ヶ月程度として、その間に督促状を3通ほど送付し(弁護士等への委託の予告も含みます)、督促架電も3度ほど行うこととし、それでも支払いのない債務者は全て機械的に弁護士へ委託するという流れです。
本日はここまでとします。
次回以降は、督促状送付のタイミングや書面の内容、督促架電のタイミングや督促内容について解説していきたいと思います。