本日は、電話対応におけるケース別対応法 その5として、
債務者の家族と称する者から
「本人は認知症で判断能力がない。自分は家族の者だが代わりに対応する」
との申し出について、対応法を解説していきたいと思います。

認知症等が進行して、債務者本人の判断能力がなくなっていたり、
乏しくなっている場合には、成年後見制度等が適用されて、後見人や保佐人等が選任されているケースがあります。
成年後見制度とは、判断能力がないとか不十分な者のために、
本人の行為の代理や補助をする者を選任するなどの方法により、本人を保護する制度のことを言います。

成年後見制度には法定後見任意後見とがあって、
法定後見は、一定範囲の親族等からの申立てにより、
家庭裁判所が本人の判断能力の程度を判断し、後見人や保佐人などを選ぶ制度です。
本人の判断能力の程度に応じて、後見、保佐、補助という類型があります。

本日は、まずは後見について解説します。

後見は、
「精神上の障害により、事理を弁識する能力を欠く常況にある」
場合に、家庭裁判所が後見人をつけるものです(民法7条)。

後見を受ける者(本人)を成年被後見人と呼びます。
この点、成年被後見人がした行為は取り消すことができます
ただし、「日用品の購入その他日常生活に関する行為」については、取り消すことができません。

もっとも、どの範囲が「日常生活に関する行為」に該当するのか、
明確に定められているわけではないですので、実際問題、後見人が出てきて、
契約を取り消すと主張されれば、それに応じざるを得ない場合も多いでしょう。

そして、契約が取り消されると、もともと契約がなかったものとみなされます(民法121条)

この場合、会社が受け取っている代金があれば、返金することになります。
他方で、成年被後見人の方は、その契約によって

「現に利益を受けている限度において、返還の義務を負う」(民法121条但書)こととされています。

要するに、成年被後見人の方は、今残っているものだけを返せばよいということです。
なお、成年後見人には、成年被後見人を代理する権限が認められていますので、
会社側は、成年後見人との間で交渉を行うことが可能です。

もちろん、成年後見人に対して、成年被後見人の情報を開示することも問題ありません。

本日はここまでとします。

次回は、他の成年後見制度、及び後見人の確認方法等について解説します。
最後までお読みいただきありがとうございました。