前回より、電話督促等の回収行為における「やってはいけない」事項について、解説をしております。
今回は、貸金業法21条1項で禁止されている残りの督促手法をご紹介します。

 

前提として、貸金業法は、貸金業者のみがこの法律の規制に服することになっていますが
(違反した貸金業者は、刑罰を受けることになります)、
貸金業者でない債権者が、貸金業法21条1項の各号に違反した場合には、
刑事罰は受けないにしても、民事上の不法行為責任を負って、
慰謝料等の支払いを命じられる可能性はありますので、注意が必要です。

 

・勤務先等に対する取り立ての禁止(同3号、4号)
貸金業法第21条1項3号は、正当な理由なく、貸金業者が、
債務者等の勤務先その他の居宅以外の場所に電話をかけることを禁止しています。
その他、電報やファックスの送信・訪問も禁止しています。
勤務先等に圧力をかけることで、弁済を要求することを防止する趣旨です。

また、同4号によれば、さらに、債務者等から訪問場所から退去してほしいとの
意思が告げられた場合には、当該場所から退去しなければなりません。
これは当然のことであり、従わない債権者は場合によっては
刑法の不退去罪に該当してしまう場合もあります。

 

・借入の事実等を第三者に明らかにすることの禁止(同5号)
貸金業法21条1項5号は、はり紙、立看板その他、いかなる方法であっても、
債務者の借入れに関する事実や、債務者等の私生活に関する事実を
第三者に明らかにすることを禁止しています。

これも当然のことであり、従わない債権者は場合によっては
刑法の名誉棄損罪に該当してしまう場合もあります。

 

・資金調達要求の禁止(同6号)
貸金業法21条1項6号は、貸金業者が債務者に対して、
弁済資金を家族や親族、友人・知人、勤務先・他の金融機関などから借り入れろ、
と要求する行為を禁止しています。

借金してまで支払うように要求する行為は、
債務の返済が困難な債務者に新たな債務を負わせることによって
さらなる苦境に立たせることになりますので、不当な行為と言えます。

もっとも、債務者の側から借入するという発言が出た場合に、それを拒否する理由はありません。

 

・第三者への弁済要求等の禁止(同7号、8号)
貸金業法21条1項7号は、貸金業者等が、債務者の家族や親族、友人・知人、
勤務先以外の者に対し、債務者が払わないから代わりに支払ってほしい、
等と要求することは禁止されています。

第三者には返済義務がない上、家族や勤務先などへの返済要求は、
債務者本人の精神・心理を圧迫・強迫する取り立てとなり得るからです。
また、債務者の家族や勤務先などが、貸金業者に対する協力を拒否している場合に、
さらに貸金業者が債務者の家族や勤務先などに取り立てに協力することを要求することは、
同8号で禁止されています。
貸金業者が、家族や勤務先に対して、債務者の連絡先を知らせることを強要することはできないのです。

 

・弁護士等からの受任通知受領後の取り立て行為の禁止(同9号)
貸金業法21条1項9号は、弁護士などが債務整理に関する通知を出し、
貸金業者がこれを受け取った場合等において、債権者が正当な理由なく、
債務者本人に取り立てを行ってはならない旨定めています。

 

・上記言動をすることを告げることの禁止(同10号)
以上に述べてきた各行為は、債務者を類型的に圧迫する行為である等の理由で、禁止されています。
そして、実際に貸金業者がそれらの行為をしないまでも、
これらの行為をするぞ、と脅すだけで、債務者は精神的・心理的な窮地にたたされます。
そこで、貸金業法21条1項10号は、債務者等に対し、
これらの行為をするぞ、と告げること自体も禁止しています。

そのため、たとえば、
「勤務先に押仕掛けて、支払ってくれるまで帰らないからな!」等と
債務者に告げるのは、第3号で禁止された行為を告げる行為ですから、同10号で禁止されます。

 

本日はここまでとします。

最後までお読みいただきありがとうございました。