今回は、自社督促において、債務者との間で支払いの合意を取り付け、
それを和解書面にする場合の注意点を解説します。

 

そもそもこのような和解書面を取り交わす目的としては、

・合意内容を明確にして、事後的に債務者が
「やはり商品に欠陥があるから払わない」といった弁解をすることを防ぐ
・債務者に、和解契約をしたという意識を高めさせ、支払いを促すことができる
・債務者がそれでも支払いを怠った場合、訴訟手続きにおいて重要な証拠とすることができる

といったことが挙げられます。
ですので、費用と手間はかかるものの、和解書面を交わすことも検討されるとよいでしょう。

 

さて、和解書面を交わす際には、次の3点に注意する必要があります。

①どの商品に関する和解なのかを明確にする
②(分割払いの場合は)期限の利益喪失条項を必ず入れる
③清算条項を入れるかどうか、入れる場合は内容をどうするかを検討する

②の期限の利益の喪失については、前回の記事でご紹介しましたので、そちらを参照してください。

【前回の記事はこちら】

vol.41 【第30回】BtoCビジネスを成功に導く『債権回収』 債権回収における支払い約束の取り付け方法について

 

次に、その債務者と継続的に取引をしている場合、支払いの遅延がどの商品に対するものなのか、
今回の和解はどの商品に対するものなのかについて、明確にする必要があります。

それが明確でないと、そもそも和解の対象が明確でないということで、
有効に和解が成立しているか微妙ですし、債務者としては和解内容の支払いをすることで
全ての商品について支払いが完了したと勘違いしてしまい、トラブルに発展しかねません。

そこで、この和解はどの商品についての和解であると明確にする必要があります(①)。
また、和解書面には、通常、「甲及び乙は、本合意書に定めるほか、
甲乙間に、何らの債権債務がないことを確認する」という清算条項を入れます。

これにより、債務者から、後になって商品に問題があったので別途損害賠償請求をするといった
紛争の蒸し返しを防ぐことができます。

 

一方で、上記①の商品を明確にすることと関連しますが、和解書面締結時点で、
会社が債務者に対して別商品の債権を持っている場合に、このような清算条項を入れてしまうと、
別商品の債権については請求できなくなってしまうことになります。

そこで、このような場合は、「甲及び乙は、第〇条に規定する商品に関し、本合意書に定めるほか、
甲乙間に、何らの債権債務がないことを確認する」と清算条項内に商品名を入れることで、
清算条項の効果を他の商品に波及させないとすることが必要です(③)。

 

本日はここまでとします。
最後までお読みいただきありがとうございました。