前回は、書面による支払い約束の取り付けの際に、保証人を付けてもらう方法を解説しました。
本日は、合意書や和解書を公正証書にする方法をご紹介します。

 

公正証書とは、公証人法に基づき、法務大臣に任命された公証人が作成する公文書です。
公証人とは、裁判官や検察官、法務局長などを永年勤めた選ばれた法律の専門家であり、
準公務員という扱いになります。

このように、公正証書は公証人という専門家が作成する公文書ですので、
安全性や信頼性に優れており、公正証書には証明力があり、執行力を有しています

 

どういうことかと言いますと、前回までに説明した合意書で債務者と和解をしたとしても、
債務者が約束通り支払いをしてもらえないケースについて、
直ちに債務者の財産を差し押さえすることはできませんが、公正証書によれば可能になるということです。

単なる合意書では、それが履行されなかった場合、裁判所に訴訟を提起して判決を得た上で、
初めて差押ができることになります。

 

合意書は、当事者間で捺印した書類に過ぎませんので、
本当にそのような合意があったのか等について疑念が残り
(平たく言うと、債権者が強引に債務者に捺印させたのではないか、既に弁済済みなのではないか、
金額に誤りがあるのではないかといった疑念です)、
強制執行まで認めるためには、裁判所の債務名義(判決等です)まで必要として、
債務者の利益を守るといった趣旨です。
他方で、公証人が作成する公正証書は、内容が信用できるということで、
強制執行認諾文言があれば、債務名義不要で、直ちに強制執行できるとされたのです。

 

強制執行認諾文言とは、「乙は、本契約による金銭債務を履行しない場合、
直ちに強制執行に服する旨陳述した」といったものです。
金銭債務においては、「強制執行認諾条項」を定めておくことで、支払いが滞った場合に、
本来であれば裁判で確定判決を受けなければ行うことの出来ない、
給与や銀行口座の差押などの「強制執行」の申立が直ちに行えます。

 

公正証書は、最寄りの公証役場で作成することになりますが、全国どの公証役場であっても構いません
所定の委任状等があれば、代理人で作成することも可能です。

なお、実際に公正証書で強制執行を行う場合は、
公正証書の正本または謄本が債務者に対して送達されていることが必要となります。

したがって、公正証書作成と同時に、送達の申請を行っておくことが実務上有効です。
いざ支払いが滞った時点で送達を試みたとしても、債務者が姿をくらますなど送達できないことがあるからです。

あらかじめ送達しておくことで、いざ支払いが滞った場合に、
公証役場に執行分を付与してもらった上で、すぐに強制執行手続きに入ることができます。

 

本日はここまでとします。
最後までお読みいただきありがとうございました。