毎月の支払業務に追われ、本来の業務に集中できないと悩んでいないでしょうか。取引先への支払いや従業員への給与振込など、ミスが許されない経理担当者の負担は計り知れません。

この記事では、支払代行の仕組みや委託できる業務内容、導入のメリットと注意点を解説します。

支払代行とは?

支払代行とは、企業が毎月行う様々な支払い業務を専門の業者に任せることができるサービスです。まずは、支払代行の基本的な役割と、よく似たサービスとの違いを整理します。

サービスの種類 主な目的 対象となる具体的な業務範囲
支払代行 支払業務の効率化と負担軽減 取引先への振込、給与の支払い、税金や公共料金の納付など
経理代行 経理部門全体の業務のアウトソーシング 記帳業務、請求書の発行、決算業務のサポートなど
決済代行 顧客からの売上回収をスムーズにする クレジットカード決済、コンビニ決済などの導入と管理

外部委託で業務を効率化

支払代行は、企業の振込や支払いの実務を外部の専門業者に委託するサービスです。

仕入先への支払いやオフィスの家賃など、企業活動において資金を動かす作業は毎月必ず発生します。数十件もの請求書を集め、インターネットバンキングに口座情報を一つひとつ入力していく月末の振込作業は、単純でありながら神経を使う業務といえるでしょう。

こうした実務を外部に切り出すことで、社内の限られた人員をより生産性の高い業務に割り当て、全体的な業務効率化を図ることが可能です。

経理代行は業務全般を担う

支払代行が「支払い」という出口の業務に特化しているのに対し、経理代行は日々の記帳や請求書発行、決算サポートなど経理業務全般を担います。

経理担当者が不在の小規模企業であれば、記帳から支払いまで一括して任せられる経理代行が適しているでしょう。一方、社内に担当者はいるものの、月末の振込作業だけが負担になっているケースでは、支払代行のみを利用する方が費用対効果は高くなります。

自社の課題や必要なサポート範囲に応じて、適切なサービスを選ぶことが重要です。

決済代行は売上回収を支援

決済代行は、顧客から自社への「売上の回収」を支援するためのサービスです。自社が商品やサービスを販売した際、お客様に対してクレジットカード払いやコンビニ払いなど、多様な支払い方法を提供するために利用されます。

例えば、インターネット通販サイトを運営する場合、自社で各クレジットカード会社と個別に契約を結ぶのは非常に手間がかかります。決済代行会社を間に挟むことで、複数の決済手段を一括で導入し、売上の入金管理を一つのシステムで行えるようになります。

支払代行が自社から外へお金を出す業務であるのに対し、決済代行は外から自社へお金を入れる業務を指します。

【関連記事】決済代行(収納代行)サービスとは?|決済のマメ知識|株式会社電算システム

支払代行に委託できる業務内容

支払代行サービスを利用することで、具体的にどのような業務を手放すことができるのでしょうか。ここでは、委託可能な主な支払い業務について解説します。

委託できる主な業務 業務の概要と特徴 期待できる効果
買掛金の支払い 取引先や仕入先への代金振込 月末に集中する振込作業の手間を削減できる
給与の振込 従業員への毎月の給与や賞与の支払い 振込金額のミスを防ぎ、正確な期日管理ができる
税金の納付 法人税や社会保険料などの公的な支払い 複雑な納付手続きを任せ、延滞リスクをなくせる
経費精算の処理 従業員が立て替えた交通費などの払い戻し 小口現金の管理をなくし、清算業務をスムーズにできる

取引先への買掛金支払い

企業間取引で発生する買掛金の支払いは、代行サービスにおける最も代表的な委託業務です。

事業拡大に伴って取引先が増えれば、毎月の請求書処理や振込件数も比例して膨大になります。数十社に及ぶ仕入先や外注先への支払いを期日までに完了させるには、請求金額と指定口座の入念な確認が欠かせません。

支払代行を利用すれば、請求書の回収からデータ作成、実際の振込手続きまでを一括で任せられるため、月末に集中しがちな経理部門の負担を大幅に緩和できます。

従業員への給与振込

毎月発生する従業員への給与や賞与の振込も、委託可能な業務の一つです。

法律で定められた期日を遵守すべき給与の支払いは、一日でも遅れれば従業員からの信頼失墜に直結します。正社員に加えてアルバイトやパートスタッフが多数在籍している環境では、毎月変動する計算結果をもとに正確な振込処理を行うのは骨の折れる作業でしょう。

給与データを代行サービスへ連携するだけで、指定口座への確実な入金が保証されます。担当者の急な欠勤などの不測の事態においても、滞りなく給与を支給できる安定した体制が整います。

税金や社会保険料の納付

法人税や消費税、毎月の社会保険料などの公的な納付業務も委託の対象になります。

税金関係の支払いは種類が多く、納付書を使った窓口払いや電子納付など、手続きの手段も様々です。国税庁の公式ウェブサイトでも案内されているように、現在ではクレジットカードやスマートフォン決済など税金の納付方法が多様化しています。しかし、選択肢が増えた分、どの方法でどのように手続きを進めるべきか迷ってしまうことも多いのではないでしょうか。

専門的な知識を持つ支払代行のスタッフに任せることで、複雑な納付手続きを正確に行い、延滞税などのペナルティを受けるリスクを未然に防ぐことができます。

参考:G-2 国税の納付手続(納期限・振替日・納付方法)|国税庁

従業員の経費精算を処理

従業員が日々の業務で立て替えた交通費や備品代の精算振込も、代行サービスで処理することが可能です。

少額の支払いが頻繁に発生する経費精算は、経理担当者にとって細かな確認作業を強いられる負担の大きい業務です。例えば、営業担当者が毎週のように提出する数百円の交通費の領収書を確認し、それぞれの給与口座に上乗せして振り込む作業は、非常に手間がかかります。

支払代行を導入すれば、システム上で承認された経費データをもとに、外部の業者がまとめて振込処理を行ってくれます。結果として、社内に小口現金を置いて管理する手間や、現金紛失のリスクをなくすことができるということです。

支払代行を導入するメリット

毎月の支払業務を外部に委託することで、企業にはどのような良い変化がもたらされるのでしょうか。ここでは、支払代行を導入することで得られる具体的なメリットを解説します。

導入前に抱えがちな課題 支払代行を導入した後のメリット
経理業務に追われ新しい施策に手が回らない 経営企画など利益を生むコア業務に時間を集中できる
金額や振込先を間違えないか常に不安がある プロの作業によるミスの防止と心理的負担の軽減ができる
担当者が休むと支払いがストップしてしまう 属人化が解消され、退職や休職への備えができる
経理担当の人件費や採用コストがかさんでいる 外部委託によりトータルでの人件費などコストを削減できる

コア業務へのリソース集中

最大のメリットは、社内の貴重な人材を利益に直結するコア業務に集中させられる点にあります。

企業の成長には、売上を牽引する営業活動や事業戦略を練る経営企画といった、前向きな投資が不可欠です。もし経営者や担当者が毎月数時間をインターネットバンキングの操作に費やしているとすれば、その時間は直接的な利益を生んでいません。

支払業務という定型的な作業を切り出すことで、空いたリソースを新規サービスの開発や顧客対応など、企業価値を高める活動へダイレクトに注力できるようになります。

人的ミスと心理的負担を軽減

外部の専門業者に任せることで、手作業による人的ミスを防ぎ、担当者の心理的負担を大きく軽減できます。

お金を扱う支払業務は、一桁間違えたり振込先を誤ったりするだけで、取引先からの信用を失うリスクを孕んでいます。例えば、経理担当者は月末が近づくにつれて、「絶対に間違えてはいけない」という強いプレッシャーを抱えながら業務を行っています。

支払代行サービスでは、複数人でのチェック体制や自動化システムが整っているため、自社で処理するよりも高い正確性が担保されます。これにより、担当者は精神的なストレスから解放され、よりリラックスして他の業務に取り組めるようになります。

属人化の解消と退職への備え

支払業務のプロセスを標準化して外部へ引き継ぐことは、業務の属人化解消と突然の退職リスクへの備えに直結します。

中小企業において、特定の人材しか支払い手順やパスワードを把握していないケースは珍しくありません。長年実務を担ってきたベテラン社員が急な病気や退職で不在になれば、翌月の支払いがストップする恐れすらあります。

外部業者との間で業務フローを明確にマニュアル化しておけば、社内の人員変動に左右されることなく、常に安定して資金が回る盤石なバックオフィス体制を維持できます。

人件費などコストの削減

支払代行の導入は、中長期的に見て経理部門にかかるトータルコストの削減につながります。

一見すると外部に委託するための手数料が新たなコストとして発生するように見えますが、全体で見れば無駄を省くことができます。例えば、支払業務のためだけに経理担当者を新たに一人採用すると、毎月の給与に加えて社会保険料や採用活動費など多額の費用がかかります。しかし、支払代行サービスを利用すれば、必要な業務量に応じた月額料金だけで済むため、採用や教育にかかるコストを丸ごと削減できます。

さらに、銀行の振込手数料が代行サービスの法人契約によって安くなるケースもあり、直接的な費用対効果も得やすいということです。

支払代行を導入するデメリット

支払代行は便利なサービスですが、良い面ばかりではなく注意すべき点も存在します。導入後に後悔しないよう、あらかじめ把握しておくべきデメリットを解説します。

デメリット 具体的な内容 導入時の対策方法
コストの発生 初期費用や月額のシステム利用料、手数料がかかる 自社の人件費と比較して費用対効果をシミュレーションする
ノウハウの不足 社員が業務を行わないため手順や知識が蓄積しない 業務フローやマニュアルを業者と共有し社内にも残す
セキュリティ懸念 外部に口座情報や取引先データを渡す必要がある プライバシーマーク取得など信頼できる業者を選定する

導入と運用にコストが発生

利便性が高い一方で、サービスの利用には初期費用や毎月の運用コストが伴います。

一般的な料金体系は、月額の基本料金に振込件数に応じた従量課金が加わる形です。振込件数が極端に少ない小規模企業の場合、自社で処理する人件費よりも代行手数料の方が高くついてしまうケースも考えられるでしょう。

導入を検討する際は、現在の経理担当者の時給換算額とサービスの見積もり金額を詳細に比較し、コストをかけてでも業務効率化や安心感を得るべきか、慎重に見極める必要があります。

社内にノウハウが蓄積しない

支払業務を外部に丸投げしてしまうと、社内に経理実務のノウハウが蓄積しなくなるというデメリットがあります。

業務の効率化にはつながりますが、将来的に会社が大規模になり、再び経理部門を内製化しようとした際に壁にぶつかる可能性があります。例えば、何年も外部に依存し続けた結果、社内の誰も請求書の確認方法や銀行とのやり取りの進め方を理解していない状態に陥ることがあります。

これを防ぐためには、外部に委託する範囲と自社で行う範囲を明確に分け、定期的に業務の進捗状況をレポートとして提出してもらうことが有効です。業者とのコミュニケーションを通じて、会社のお金の流れを常に把握しておく姿勢が求められるということです。

情報漏洩のセキュリティ懸念

自社の機密情報である取引先データや口座情報を外部に預けるため、情報漏洩のセキュリティリスクはゼロではありません。

万が一、委託先のシステムがサイバー攻撃を受けたり、担当者の過失でデータが流出したりすれば、自社の信用問題に発展します。例えば、コストが安いからという理由だけで、セキュリティ体制が不透明な業者を選んでしまうと、後々大きなトラブルに巻き込まれる恐れがあります。

そのため、契約前にはデータの暗号化通信が行われているか、アクセス権限が厳格に管理されているかを徹底的に確認する必要があります。外部委託は便利である反面、パートナー選びの責任は自社にあるということを忘れてはいけません。

支払代行サービスを比較・選定する基準

数ある支払代行サービスの中から、自社に最適なパートナーを見つけるためにはどのような点に注意すればよいのでしょうか。ここでは、業者を比較・選定する際の重要な基準を解説します。

自社の課題と委託範囲の一致

業者選びで最も重視すべきは、自社の抱える課題を解決できる業務範囲をカバーしているかどうかです。

支払代行といっても、振込作業のみをシステムで自動化するサービスもあれば、紙の請求書の回収からデータ入力まで人的にサポートしてくれる業者もあります。振込データの作成までは自社で対応し、最終的な振込だけを任せたいなら安価なシステム型が向いているでしょう。

まずは現状の経理フローを細かく洗い出し、どのプロセスを切り離したいのかを明確にした上で、自社のニーズに合致するサービスを選定してください。

セキュリティ体制の強固さ

大切な資金や取引先情報を預ける以上、セキュリティ体制の強固さは絶対に妥協してはいけないポイントです。業者のウェブサイトや資料を確認し、情報保護に対する具体的な取り組みが行われているかをチェックします。

例えば、個人情報の取り扱いが適切であることを示す「プライバシーマーク」や、情報セキュリティの国際規格である「ISO27001」を取得しているかは一つの指標になります。

また、システム上での操作履歴がログとして残る仕組みがあるか、銀行の残高を直接動かす権限までは渡さない仕組みになっているかも重要です。

事故が起きてからでは遅いため、納得できるまで担当者にセキュリティの仕様を質問することが大切です。

参考:プライバシーマーク制度|一般財団法人日本情報経済社会推進協会(JIPDEC)

参考:概要 | ISO/IEC 27001(情報セキュリティ) | ISO認証 | 日本品質保証機構(JQA)

費用対効果と料金体系の確認

導入前に複数の業者から見積もりを取り、料金体系が明確で費用対効果が見合うかを確認することも不可欠です。

一見すると基本料金が安く見えても、振込手数料が割高であったり、細かなオプションを追加すると総額が跳ね上がったりすることがあります。例えば、急な振込先の追加や、紙の請求書のデータ化に対して、都度追加料金が発生する契約になっていないかを確認する必要があります。自社の毎月の平均的な振込件数や業務量を正確に伝えた上で、一年間利用した場合のシミュレーションを出してもらうと安心です。

金額の安さだけで決めるのではなく、削減できる自社の人件費とのバランスを見て判断するということです。

まとめ

この記事の要点をまとめます。

  • 支払代行の役割:振込や税金納付などの支払業務を外部に委託し、経理の負担を減らすサービスです。
  • 導入のメリット:担当者の心理的負担やミスをなくし、コア業務にリソースを集中させることができます。
  • 導入のデメリット:手数料などのコストがかかる点や、社内にノウハウが残らない点に注意が必要です。
  • 選定の基準:自社の課題に合った委託範囲を選び、強固なセキュリティ体制を確認することが大切です。

自社に最適な支払代行サービスを導入し、安心で効率的な経理体制を構築していきましょう。

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